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明はそこで小さくため息を吐くと、余計な跡を残さないようにと装着している、靴下の上から履いているビニール袋に視線を落とす。
運び出される時に見た遺体の状態はかなり酷かった。
それこそ現場に慣れている人間でさえ、思わず吐き気を催してしまう程に――。
そんな思いを断ち切るように立ち上がり煙草を咥え直した時、廊下の方から呑気な声がかかった。
「明、そんなところで何をしているんだ」
その声に反応して振り向くと、見慣れた相棒が明かりに照らされながら立っていた。
新谷令、それがいつも明の隣に存在し、無茶をしでかす明のストッパーになっている幼なじみの名前だった。
明は短めにまとめた黒髪に、鋭い目付きが特徴的な、どちらかと言うと美形の部類に入る顔をしている。
ダークグレーのワイシャツに濃紺のネクタイを締め、黒のスーツを着こなし、一見近寄りがたそうな雰囲気が漂っている青年である。
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