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対する令の方は、黒のタートルネックにグレーのスーツを着こなしているだけの、実にラフな格好をしている。
そして耳にかかる程の長さの黒髪に、少したれ気味の優しげな瞳を持っている、気弱そうな印象を受ける青年だった。
二人は警視庁捜査一課の人間で、この部屋には殺人事件の現場検証のために訪れている。
声をかけられた事で明が身体ごとそちらの方に向き直ると、咥えている煙草を目ざとく見付けた令が顔をしかめる。
「現場で煙草を吸うのは駄目だって、何度言えば分かるんだよ。灰が落ちたらどうするんだ」
「それくらいは配慮している」
明は簡潔にそう答えただけで、煙草を吸うのを止めようとはしない。
それどころか咥えたままで近付くと、その姿が廊下で点っている明かりに照らし出される。
すげなくあしらわれてしまった令は面白くないのか、呆れた表情で明を見ただけでため息を吐いた。
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