第二章・―ストーカー―

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 数十分後、話を全て聞き終えた二人が顔を見合わせながら同時に言った。 「……なるほど、そういう事だったんですか。ならうちのストーカー君が重要な証言でもしてくれたら、事件解決の糸口になりますね」  遺留品から推理したもう一人の存在と、新野達がもたらしたストーカーの情報から、思っていたより早く捜査が進展しそうな兆しが見えて表情が明るくなる。  現場で働く刑事にとって、初動捜査の遅れがどれだけその後の動きに影響があるのかは痛い程に理解出来ているため、 そういった展開は珍しいながら嬉しいものでもあるのだ。  それで手放しに喜び、犯人逮捕まで油断して結局時間がかかる事もあるのだが、そうなる恐ろしさも熟知している明に決してない話であった。 「そうだね。探す手間が省けたのは嬉しいけど、だからといって油断しちゃ駄目だよ?」  しかしそれに頷いて令がそう答えると、今まで何の反応も示さなかった明が低い声で呟いた。
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