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「……出来過ぎ」
「え?」
珍しく聞き取れなかったのか令が聞き返すのに、明は短くなった煙草を名残惜しそうに見詰めてから、再び口をひらいた。
「いや。……話が出来過ぎって感もあるかと思って、……な」
被害者にはストーカーがいたが、仮に殺害したのがそいつではなく証言通り犯人が他にもいたのなら、殺人をカメラ越しにでも目撃したのは不運といえるだろう。
通常化してはいけないのだが、ストーカーが愛する相手に拒否されて愛が憎しみに変わり、殺人に至るケースは少なくない。
それなのに、ストーカーは犯人は自分ではないと言い張り目撃したという殺人の証拠品も、恐らく持っている筈なのた。
「そうかな」
現時点でそこまで懸念している明の真剣な表情に比べて、令は随分と呑気な表情で答える。
しかしそれを咎める事をせず、灰皿に煙草を押しつけながら独り言のように続けた。
「面倒な事にならければ良いが……」
そう呟いた明の表情は、まるでその先に立ち込める暗雲を予測しているかのように、珍しく暗いものだった。
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