第三章・―捜査開始―

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「……どうかしたかね?」  どうして顔を上げたのか質問してみたのだが、反応もせず何故か嫌そうに顔をしかめると、まるで高村の言葉を無視するように呟いた。 「……扼殺」  昨夜遺体を見ている明には、死因が扼殺である事が気にかかったのだろう。  遺体は全身傷付けられた跡もあったようなのだが、それが生前のものなのか死後のものなのかにより意味合いは違ってくる。 「何故だ……」  そう呟いてからは、何事かを思案する風になってしまい動かなくなる。  それを見ていた高村は、それ以上明とのまともな会話をする事を諦め、小さくため息を吐くと、再び動き出すのを待った。  それでもしばらく沈黙したままだったが、やがて明が顔を上げる。 「高村警視、遺体の検死は誰が?」 「素子(もとこ)さんだよ」  ようやく口をきいてくれた明に対して高村が答えた。
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