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寂しいクリスマスが過ぎ去ったある日の朝、私は走っていた。
向かう先は駅。
今日、加藤は先に一人で東京に向かうと言う。
この間、どうしても気になった私は加藤の家に電話をして、おばさんからいつ出発するのか聞き出していた。
行って私は
どうしたいのだろう…
何も考えていなかったが、行動する事にした。
入場券を買って、ホームに行くと一番端のほうに携帯をいじりながら、電車を待っている加藤を見つけた。
「今日、出発なのね。緊張してる?」
「うわぁっ!?…なんで、高部がいるんだ??」
突然に声をかけたので、加藤は物凄く驚いていた。
胸を押さえているから、相当ドキドキしているのかも…
「応援しに来たのに酷いなぁ」
落ち着いてきた加藤は、不思議そうに私を覗き込んできた。
今度は
私がドキドキしてきたよ…
「応援?今日行くのは受験しに行くんじゃないぞ?」
「知ってるって。好きな人に会うんでしょ。だから、応援しに来たの」
加藤の顔つきが変わった。
真剣な顔だ。
好きな人に会うのは、嬉しい気持ちが大きいが、その中に不安があるのも知っている。
時には不安のほうが大きくなって、押し潰されそうになる。
久しぶりに会うのでは、不安のほうが大きいだろう。
だから、応援なのだ。
「…うん、元気出た。何年ぶりかに会うから、どうしようかと思ってた。気持ちは変わらないんだから、そのまま頑張ってくるよ。わざわざ、ありがとうな高部」
加藤は笑顔で
到着した電車に乗り込む。
本当は応援なんかしたくないよ…でも、貴方の悲しむ顔は見たくない。
ここまで、損な役を…手を貸したのだから、頑張って欲しいと思う。
走り行く電車を見送りながら、そんな事を考えていた。
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