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下駄をカラン コロンと鳴らし
公園に着くと、加藤は既に到着していた。
「早いね…もう来てたんだ」
加藤に声をかけると、私を上から下までじっくりと見ている。
見せるつもりで浴衣を着て来たけど、見られてるってわかっているのも、恥ずかしくって居心地が悪いものだ。
「うん、高部可愛い。浴衣似合うな」
すっと照れることなく、私に言ってきた。
嬉しいけど、もうちょっと動揺するとかあってもいいのに…
そう、照れるとか動揺したりするのは私だけなんだ。
今だって
加藤は何の躊躇もなく私の手を掴み、繋ぎながら歩いているのだから。
ドキドキ心臓がうるさいよ。
「今日は人がいっぱいだからなしっかり掴んでろよ」
「うん」
二度と
離したくないって思った。
この手が今日だけでなく、ずっと繋いでいて欲しいってどれだけ思ったことか…
後ろから着いて歩く私は、加藤の背中を見つめ、抱き着きたい気持ちを抑えながら歩いた。
やがて
花火大会の会場とは、だいぶ離れた所に辿り着いた。
辺りは人気もない場所だが、少し高台になっている。
不思議な顔をして加藤を見ると得意げに説明を始めた。
「ここは、俺しか知らない花火が一番良く見える絶好の場所なんだ。ここから見る花火は綺麗だぜ」
無邪気に笑いながら言う加藤は生き生きしていてカッコイイ。
そんな所が大好きなんだ、私。
何だか、嬉しいような悲しい気持ちになってきた。
ヒュー … ドンッ!
加藤の言う通り
大きくて、とても綺麗な花火が上がっているのが見えた。
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