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「高部!ちょっといいか?」
帰り際、教室を出ようとした時に須藤先生に手招きされた。
たぶん
加藤の成績のことだろう。
須藤先生は
不思議な顔をしていた。嬉しいのか、困っているのかハッキリしない表情だった。
「お前、凄いなぁ…本当に成績上げるなんて思わなかったわ…何やってたんだ?」
私が凄いんじゃない…加藤が凄いんだって。
何でわからないのかな?
「私は、何もしてません。わからない所を、教えてあげてただけです。加藤君のやる気が、結果を出したんだと思いますけど…」
須藤先生は
うんうんと頷いている。
「これで、持続していけば合格圏内だな。いやぁ、驚いた」
嬉しそうに
職員室に戻って行く須藤先生。
合格か…
やっぱり教えなければ良かったかもしれない。
東京は遠いよ。
「あーあ…羽があったらなぁ」
「嫌ですよ。飛んで行かれちゃうのは…」
独り言に返事があったので、振り向くと、草野が立っていた。
あからさまに、私は警戒する。
昨日、叩いてそのまま帰ったから…何かしに来たとか?
「そんなに警戒しないで下さい…謝りに来たんですから」
かける言葉がみつからず、黙っていると草野が近付いて来た。
「昨日は本当に、ごめんなさい…自分の事しか考えてなかった。好きな気持ちは本当だから、諦めずに高部先輩にアタックするんで、ヨロシク!」
私が近くにいるから
出来るんだよね…
思わず言葉にしそうになった。
「本当に飛んで行っちゃいそうだ…大丈夫ですか?」
飛んで行っても、必ずしも幸せとは限らないのに…
それでも
飛んで会いに行きたいと思う。
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