嬉し悲しい 夏休み

3/12
前へ
/26ページ
次へ
教室に入ると 加藤が地元の高校を受験しない話で持ち切りだ。 どこから漏れたのかな… 「なんで、イクは知ってたの?しかも、結構前っから知ってたみたいだけど…」 「…………」 舞子の質問には答えないで 夏、加藤と二人で勉強をした事を思い出していた。 ―― 夏 夏休みを明日に控えた 一学期の最後の日 帰り際に 職員室に用事があることを思い出した私は一人向かっていた。 「えーっ!絶対に嫌だ!行くったら行く~!!」 職員室の扉を開ける前から、大きな声が聞こえてきた。 この声は知ってる… 私の胸はドキドキし始めた。 「いいかぁ、加藤。調べたけどなぁ…お前の今の成績じゃ無理だ。レベルが高い」 担任の須藤 守【スドウ マモル】 先生は若くて、私達の話をよく聞いてくれる人気のある先生だ その前で 頬を膨らませ、須藤を睨んでいるのは加藤 敦【カトウ アツシ】だ。 「せんせ…」 申し訳なさそうに様子を見ながら声をかけた。 二人が同時に私を見た。 うぅ、キツイなぁ。 「お邪魔ですね…またにしますね」 くるりと反対を向いて、その場を後にしようとすると慌てて須藤が止める。 「ちょっ、ちょっと…!待て、高部。行くことないぞっ」 チラッと加藤を見ると、膨れっ面はそのままでそっぽを向いている。 何の話をしていたのかな… この時は、まだ加藤が 遠くに行くなんて知らなかったから… 長い休みの前に会えてラッキー…ぐらいにしか思っていなかったんだ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

565人が本棚に入れています
本棚に追加