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教室に入ると
加藤が地元の高校を受験しない話で持ち切りだ。
どこから漏れたのかな…
「なんで、イクは知ってたの?しかも、結構前っから知ってたみたいだけど…」
「…………」
舞子の質問には答えないで
夏、加藤と二人で勉強をした事を思い出していた。
―― 夏
夏休みを明日に控えた
一学期の最後の日
帰り際に
職員室に用事があることを思い出した私は一人向かっていた。
「えーっ!絶対に嫌だ!行くったら行く~!!」
職員室の扉を開ける前から、大きな声が聞こえてきた。
この声は知ってる…
私の胸はドキドキし始めた。
「いいかぁ、加藤。調べたけどなぁ…お前の今の成績じゃ無理だ。レベルが高い」
担任の須藤 守【スドウ マモル】
先生は若くて、私達の話をよく聞いてくれる人気のある先生だ
その前で
頬を膨らませ、須藤を睨んでいるのは加藤 敦【カトウ アツシ】だ。
「せんせ…」
申し訳なさそうに様子を見ながら声をかけた。
二人が同時に私を見た。
うぅ、キツイなぁ。
「お邪魔ですね…またにしますね」
くるりと反対を向いて、その場を後にしようとすると慌てて須藤が止める。
「ちょっ、ちょっと…!待て、高部。行くことないぞっ」
チラッと加藤を見ると、膨れっ面はそのままでそっぽを向いている。
何の話をしていたのかな…
この時は、まだ加藤が
遠くに行くなんて知らなかったから…
長い休みの前に会えてラッキー…ぐらいにしか思っていなかったんだ。
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