嬉し悲しい 夏休み

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図書館の開館と共に中に入り 一番端で涼しい席を確保した。 加藤はTシャツにジーパンと簡単な格好だったけど、初めて見る私服姿に一人心の中で興奮していた。 「苦手な科目からやろうか…何が苦手?」 チロッと上目使いで私を見る仕種が可愛くて、思わず動揺してしまう。 「全部苦手。っていうか、やる気が起きなくて今まで勉強してなかったんだよね」 ということは 今まで適当だったって事かな? とりあえず、どれぐらいのものか見るため各教科、宿題で出ていた問題集をやって貰った。 「加藤ってやれば出来るんじゃないの?間違ってた所は教えれば直ぐに覚えるし…夏休み頑張れば上位狙えるよ」 驚いた。 いつも 成績が悪いのは知っていた。 もしかしたら 物凄く大変な事になるかもと覚悟していたのに… 本人の言う通り やる気を出して無かっただけかもしれない。 「マジで!俺頑張っちゃうよ」 鼻歌交じりで問題を解いていく加藤。 これだけの集中力があればやってしまうだろう。 「加藤が行きたい青葉学園に何があるの?よっぽどでしょ…わざわざ東京の学校にするんだから」 これだけ頑張っているんだ どんな理由で行きたいと思うのか知りたい。 「従姉妹の兄ちゃんとその幼なじみが生徒会の会長と副会長をしているんだ。二人とも小さい時によく遊んで貰ったんだ」 憧れの人が上に立つ学校に行きたいと思ったのかな… それだけだったら… こっちの進学校に入って 同じ生徒会長になればいいことなのに…何故? ふと見た 加藤の表情が変わった。 「もう一つは…」 直感。 この後 私が聞きたくない事を口にするはずだ。 私は加藤から視線を外した。 .
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