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仕事が決まって、一週間ほどたった日のことだ。
「良介。ヤバい、遅刻する」
「わかってる」
兄弟は相変わらず、清掃の仕事を続けていた。二日に一度の周期で仕事があるのだが、二日の間に特別汚れることもないので、退屈な仕事だった。
なんとか事務所に到着すると、山田さんに一言挨拶してから、早速着替えて仕事に取りかかる。
「はい、じゃあ頑張ってね」
これは山田さんの口癖だった。丁重な物腰に表れているように、親切な人だった。清掃はだいたい午前で終わるが、それだけの仕事の兄弟も尊重し、事務所の休憩時間に兄弟を招いたりした。それで、些細な仕事だが、兄弟の意欲が湧いていた部分もある。
兄弟はいつも通りに清掃を開始した。もともと小さなビルの小さな事務所なので人通りはなく、誰の邪魔になる心配もなかった。廊下を一通り終えて、階段へ向かおうとするとき、良介の視界にある物がちらついた。
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