兄弟の仕事

2/4
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
仕事が決まって、一週間ほどたった日のことだ。 「良介。ヤバい、遅刻する」 「わかってる」 兄弟は相変わらず、清掃の仕事を続けていた。二日に一度の周期で仕事があるのだが、二日の間に特別汚れることもないので、退屈な仕事だった。 なんとか事務所に到着すると、山田さんに一言挨拶してから、早速着替えて仕事に取りかかる。 「はい、じゃあ頑張ってね」 これは山田さんの口癖だった。丁重な物腰に表れているように、親切な人だった。清掃はだいたい午前で終わるが、それだけの仕事の兄弟も尊重し、事務所の休憩時間に兄弟を招いたりした。それで、些細な仕事だが、兄弟の意欲が湧いていた部分もある。 兄弟はいつも通りに清掃を開始した。もともと小さなビルの小さな事務所なので人通りはなく、誰の邪魔になる心配もなかった。廊下を一通り終えて、階段へ向かおうとするとき、良介の視界にある物がちらついた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!