42人が本棚に入れています
本棚に追加
一日遅れの新聞が届く――。
坂井兄弟の、どれだけ絶望したことか。これでやっと逃れられた、と肩の力を抜いたその矢先だったから、衝撃も大きかった。
一回目の時と違い、兄弟はほとんど喋らなかった。兄は、二つ並んだ昨日の新聞を見比べ、手を目にあてたりした。それを見ていた弟は、ただ一言、
「……やっぱり、逃げられないね」
と言った。
結局、二人は未だに目の前の脅威を回避できずにいた。ふと気付けば、部屋の片隅に怨霊が、憑依された弟の悲鳴が――そんな日々がまた始まる。
弟の呟きに答えるように、兄は
「これからは、三人暮らしなんだな」
聞こえるか聞こえないかきわどいような声で、そう言った。
――ナカドウさんはここまで追ってきた。
きっとその意志は、本気だ。
最初のコメントを投稿しよう!