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ナカドウさんには、もう兄弟に対する容赦はなかった。
その日の夜、早くも弟は憑依される……。
夜、兄弟は何もせずたたずんでいていた。夕飯時ではあったが、二人ともなぜか食欲がわかなくて、食事の用意さえしていなかった。
ナカドウさんがやって来る――。妙にそんな気がした。考えれば考えるほど、そんな悪い予感の現実味は増していくのだった。
不意に、蛍光灯がチカチカし始めた。
「ここの電気、そんなに古かったか?」
「さぁ……。でも、入居する前から古かったかも」
「今度新しいの買うか」
弟はそれには答えず、不安そうに弱い点滅を見上げた。
と、蛍光灯が切れて真っ暗になる。
闇の中で聞こえたのは、鼓膜を引き裂くような、弟の悲鳴。
ナカドウさんが来た。疑いようもなかった。
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