4 思い出

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「君が呼び出すなんて、久しぶりだね」  彼女はいつもと変わらない口調だった。先日の彼とは対照的な印象を受けた。 「そうですね。僕ももう、呼び出すことなんてないと思ってましたよ」  彼女も僕より年上。本当なら敬語を使わない相手だが、同じ学校の誼で使うようにしていた。 「なんか、君に敬語使われると変な感じがするね」 「そうですか? 敬語で話してることが多いと思いますよ?」 「そうかなぁ?」  彼女は笑いながら言った。 「そういえば、あの時も君はずっと敬語だったね?」 「あの時……そうでしたね」  彼女の口から、まさか昔の話が飛び出すとは思わなかった。そう、僕は前に彼女と付き合っていた経歴があった。 「2ヶ月あったのに、君はずっと敬語で、私のことを先輩って呼んでて……」 「昔の話はやめましょうよ。てか、急にどうしたんです? 普段はそんな話、触もしませんよね?」  僕は不思議に思い、彼女に問い掛けた。しかし、彼女の口はなかなか動かない。 「それでは、本題に入ります」  僕は何かを察し、唐突に話を切り出した。 「実は、一通手紙を預かっているんです」  ブレザーのポケットから、その手紙をスッと取り出し、彼女に見せた。 「あの彼からですよ。さっきの話が詰まった原因もこれですか?」  彼女は目を逸らしていた。僕はそれを気にしつつ、先日預かった手紙を彼女の手へと回した。 「ありがとう」  そう言って手紙を握り締めた彼女の顔は、妙に笑顔だった。 「先輩、なんでそんなに笑顔なんですか?」 「なんでだろ……君との時も、私は笑っていたよね?」 「はい。今でもあの笑顔は覚えています。そして、今も同じ笑顔が目に見えます」 「私もツラいんだ……今も、あの時も。だから、顔だけでも笑っていたいんだよ」 「……先輩は強いですね。身体は弱いけど」  僕も同じように笑顔を作った。 「君は一言多いよ」  彼女の笑顔も、自然な形を取り戻していた。 「手紙は確かに渡しましたよ」 「うん。わざわざありがとうね」 「いえいえ。それでは、また。さようなら」 「バイバイ。また会える日まで……」 <fin>
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