1 雨の教室

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「雨が降ってきたね」  2人きりの教室で、彼はそっと呟いた。 「台風らしいよ。下手すると休校になるかな」 「そしたら、この学校には俺らだけになるね」 「そうだな。小学生の時も、こんなことがあった」  彼は窓の外を覗いていた。雨足はますます強くなっていく。 「なぁ、また勝負しないか?」 「はぁ?」  彼の言っている意味が、最初は全くわからなかった。 「あれだよ、あれ。小学生の頃もやっただろ?」 「あぁ、あれか」  彼の言葉でやっと何かを思い出した。 「けど、俺らもう高校生だぜ」 「そんなこと関係ないさ。あの日と同じ、早朝に学校に忍び込んだのは2人とも成長してないんだからな」  その言葉に、2人は揃って笑い出した。 「そうだな、2人とも成長してない。久々にやるか。ルールはどうする?」 「そんなのは簡単だろ? 制限時間は7時半まで。学校のセンサーと教員に見つからなければ勝ちだ」 「もし見つかったら、軽く指導だな」 「その時は同罪さ。2人で処分を受けような」 「おう。いいぜ」  大粒の雨が教室の窓全体に叩きつける。室内はその音でいっぱいになっていた。 「それじゃぁ始めようか」 「今回は協力プレーだな」 「そうさ。それじゃ、鬼ごっこのスタートだ」  2人は校舎内の暗闇に消えていった。
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