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「雨が降ってきたね」
2人きりの教室で、彼はそっと呟いた。
「台風らしいよ。下手すると休校になるかな」
「そしたら、この学校には俺らだけになるね」
「そうだな。小学生の時も、こんなことがあった」
彼は窓の外を覗いていた。雨足はますます強くなっていく。
「なぁ、また勝負しないか?」
「はぁ?」
彼の言っている意味が、最初は全くわからなかった。
「あれだよ、あれ。小学生の頃もやっただろ?」
「あぁ、あれか」
彼の言葉でやっと何かを思い出した。
「けど、俺らもう高校生だぜ」
「そんなこと関係ないさ。あの日と同じ、早朝に学校に忍び込んだのは2人とも成長してないんだからな」
その言葉に、2人は揃って笑い出した。
「そうだな、2人とも成長してない。久々にやるか。ルールはどうする?」
「そんなのは簡単だろ? 制限時間は7時半まで。学校のセンサーと教員に見つからなければ勝ちだ」
「もし見つかったら、軽く指導だな」
「その時は同罪さ。2人で処分を受けような」
「おう。いいぜ」
大粒の雨が教室の窓全体に叩きつける。室内はその音でいっぱいになっていた。
「それじゃぁ始めようか」
「今回は協力プレーだな」
「そうさ。それじゃ、鬼ごっこのスタートだ」
2人は校舎内の暗闇に消えていった。
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