2 幽霊

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「幽霊って、本当にいるのかな」  誰もいない小高い丘のベンチで、喪服を着込んだ一人の若い男が呟いていた。 「今、僕のこの独り言を聞いてくれてる幽霊っているのかな」  幽霊。そんな不確かな存在のことを、彼はずっと問い続ける。 「僕の声を聞いているかい? 聞いていたら返事をしてくれ」  当然、返事などはなく、風の音だけが当たりを賑やかしている。 「大昔に亡くなった僕の先祖が、僕の背後霊になっていると父は言ってたけど、本当にいるのか?」  彼は自分の背後に視線を送った。 「いないみたいだね。じゃぁ、母が言ってた水の神様はいるんですか?」  さっきとは違う方向に視線を送っている。しかし、何も起こらないのは変わらなかった。 「それじゃぁ、幽霊はいないのかな……」  そう呟き、彼は下を向いて考え込んでいた。 「そんなことないわよ」  すると、同じく喪服を纏った若い女が彼に答えた。 「姉さん……」 「幽霊はいるわ。私とあなたの後ろで、昨日から見守ってくれてる」 「昨日から……?」 「そう、昨日から。私たちのお父さん、お母さんがいるわ」 「けど、あんな事故で………」  彼は堪えきれずに涙を流していた。 「確かに酷い事故だったわ。車10台を巻き込んだ玉突き事故。沢山の死亡者を出しておきながら、首謀者はピンピンしてるみたい」  不良の事故で、2人は両親を失っていた。 「姉さん……」 「大丈夫よ。お父さんもお母さんもすぐ近くにいるわよ」 「本当に……?」 「本当よ。ね、お父さん、お母さん」  彼女はそう言って空を見上げた。静かに吹いていた風たちが、2人の周りを舞っていた。 「綺麗な星空ね。そろそろ帰りましょう」
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