◆Heaven or Hell.

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   スペインの街を彷彿とさせる石材の建物は、何故かワラ葺き屋根。そこに風見鶏が刺さっている。  大きな十字架が乗っているのは、日本文化が誇る五重の塔。  インドネシアの船形住居を思わせる、屋根の反り返った木造の建物の上には、同じく反り返ったシャチホコが3つ。三角関係か。 「和洋折衷……と言うか、ワールド折衷と言うか……」  この国の国土を踏んで、早3日。俺は今、街外れにある丘の上にいるのだが、ここから見えるこの国の建造物は、何と言うか……凄い。  世界各地の様々な建造物を足して割ったような建物だらけだ。 「……まあ、世界中の人がこの国に来ると考えれば、当然といえば当然か……」  生きていた時はいくつも国があったが、『死後の国』は一つ。この国には、様々な国籍の人がいる。しかも、どういう設定なのかは知らないが、この国には『言葉の壁』というものが存在しない。英語圏の人に対しても、中国語圏の人に対しても、俺が日本語で話せば通じてしまう。  恐らく、このような建造物を産み出す『ごちゃ混ぜ文化』が育つ背景には、言葉の壁が無いと言うことも関係しているのだろう。もし、生きていたときと同じように言葉の壁があったなら、言葉の通じる者同士だけでコミュニティを形成してしまい、このように文化が混在することにはならなかったに違いない。 「……死んで始めて解り合えるっていうのも、皮肉な話だよな……」  まあ、俺も人である以上、他人のことは言えないが。  
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