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「何これ……」
自己紹介も済ませたところで、魔王を倒す計画を練る為に、ハクトさんを連れて帰宅した私。そんな私の目に飛び込んできたのは、不自然なほどピカピカに掃除された部屋。
私が家を飛び出した時には、壁も床も黒ずんでいて、天井には蜘蛛の巣が張り巡らされているような状態だったのに……ハッ!? まさか、魔王退治を応援する心優しい妖精さんがお掃除を!? ありがとう、ありがとう妖精さ……
「あらあら、気が早いですね……モグモグ」
心の中で妖精さんに感謝を告げる私の思考を遮ったのは、女性の声。私が顔を上げると、奥の部屋から真っ黒なスーツを身に纏った女性が姿を現した。女性は何故かペペロンチーノを食べている。
この人は……誰? 妖精さんにはとても見えないけれど……泥棒?
「何でアンタがここにいるんだ?」
私の背後から、女性に声をかけるハクトさん。ハクトさんのお知り合い?
「何でって……モグモグ。お仕事ですよ。この家に住んでいたおじいさんが無事に転生したので、空き家になったこの家を、次の人が使えるように掃除していたんです」
おじいさんが……転生? この人は何を言っているの?
「へえ……入国手続き所ってのは、そんな仕事もするんだな」
「モグモグ……ええ。家の掃除は面倒なので、みんな嫌がるんですけどね。今回は、たまたま私がじゃんけんで負けてしまったので……ゴクンッ」
入国手続き所? 何だかまた意味の解らない単語が……これも部族語?
「ふう……まあ、私が入国手続きを担当した方が、この家に入居することになったというのも、理由の一つなんですけどね」
「アンタが担当したってことは……まさかとは思うが……」
ハクトさんが自分の顔を指差す。
「ご、明、察。そうです。今日からこの家は、ハクトさん。あなたの家です」
……はい? 本当に、この人は何を言っているの?
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