◇あの世の国のアリス。

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  「いや……だが、この家は……」  言いながら私の顔を見るハクトさん。そうそう、ここは私の家。 「あら? そちらのお嬢さんはどちら様?」  むしろ、あなたはどちら様? 「この子はアリス。この家に住んでいるようなんだが……」 「はい? おかしいですね? こんなお嬢さんと同居していたなんて、住民記録には無かったんですが……」  まあ……確かに、おじいさんに拐われてきたから、記録には無いかもしれないけれど……事実は事実よ。 「それに、私はここ数年この周辺区域を担当しているんですが、『アリス』という少女の入国手続きをした記憶が無いんですよね」  私も入国手続きなんてされた記憶は無いです。 「ちょっと、端末で検索してみますか」  言いながら、手のひらサイズの四角い箱のような物を取り出す女性。 「へえ……そんなことが出来るのか」 「ええ、最近では死後の世界でも近代化が進んでいまして……」 「携帯みたいな形だな」 「見た目は確かに携帯ですが、機能はスーパーコンピュータ並みですよ。全世界の魂のデータが入っていますから。これがあれば、ここ数年間の死亡者リストから入国記録まで、一発で検索出来るという優れモノなんです」  死後……死亡者……え? 「えーと……じゃあ、まずお嬢さん。自分の生まれた国の名前は言える? あと……出来たら、死んだ場所と、死んだ理由も」  女性が私の顔を覗き込んでくる。息がペペロンチーノ臭い。  死んだ理由? 死んだって……どういう意味? それに、生まれた国って……私は気付いたらこの国にいて、おじいさんに拾われて……それから…… 「死んだ理由って……どういう、意味ですか? 私は、この国で生まれたんです、けど……」  何故か震える声。私がそう言うと、女性は一瞬、困ったような表情をしてから、ハクトさんと顔を見合わせた。  一体、何だというの?  意味が解らない。焦りとも、緊張とも、恐怖とも違う、理由の解らない不快な感覚が全身を支配する。震えと冷や汗が止まらない。  気持ち……悪い。  
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