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「あー……くそっ。アリスのやつ、思いっきり殴りやがって……」
俺はいま一人、街の中を歩いている。
あのペペロンチーノ女が去った後、アリスがこの国のことについて訊ねてきたので、この国が死後の国であることと、俺たちは既に死んでいるということを話した。
するとアリスは『一人にして欲しい』と言って、何故か俺にボディーブローを喰らわせた。突然、そんな話を聞かされてショックを受けたのだろうが、ボディーブローはないだろう。ボディーブローは。
兎にも角にも、家を追い出され、再びただの暇人と化した俺は、行くあても無く、街をフラフラとさ迷っているというわけだ。
「はあ……これからどうするかなあ……」
自然とため息が溢れる。
とりあえずタイミングを見計らって家には戻るつもりだが、一体どのタイミングで戻ればいいのか解らない。自分、不器用な男ですから。
「おやおや、何かお困りの様子ですが……どうかされましたかな?」
今の俺はそんなに、お困りオーラを発しているのか。大きな噴水のある広場のような場所で、ベンチに座る老人に声をかけられた。
「いや、少し暇を持て余しているだけだ」
さらりとそれだけ言って去るつもりだったが、老人は、実は自分も暇なんだと笑い飛ばした後で、『暇潰しに老人の話し相手でもしてくれないか』と提案してきた。
俺も特に断る理由がなかったので、『話を聞くのは構わないが、つまらない話だったらお断りだ』と一言お断りをしてから、老人の隣に腰かけた。
「はてさて、つまらない話はお断りと……では、一番身近な、ワタクシたち魂の話でも致しましょうか」
老人は、ポツリポツリと語り出した。
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