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「では、話を始める前に……アナタは、『魂』とは、何だと思いますか?」
不意に問いかけてくる老人。まず質問から入って、聞き手の興味を引く作戦か……この老人、なかなかのテクニシャンだな。
「……だが、解りません」
「まあ、普通は解らないでしょう。では質問を変えますか。この『国』とは一体、何のためにあると思います?」
なに? 更に別の質問だと? なるほど。前の質問の答えを先送りにして、聞き手の知識欲を刺激しているのか……この老人、話しのプロフェッショナルだな。恐れ入る。
「……だが解りません」
「そうですか。……ところで、なぜ『だが』を付けるんですか?」
「いや、心の延長線上で」
「よく解りませんね」
ゴメンなさい。
話が脱線しそうだったので、とりあえず気にせず続けて下さいと伝えた。老人は『はあ……』と情けない声を出して、なにやら奇人変人を見るような目で俺を見たが、そこは話しのエキスパート。すぐに表情を戻し、再び魂について語り始めた。
「この国はワタクシたち魂を浄化するために造られた、言わば『浄化施設』なんです」
その後、老人の口から語られた話は、なかなか興味深いものだった。
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