◆Lost Memory.

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   老人が語るには、魂というのは、“『生命の核』に『記憶』という不純物が混ざり込んだもの”らしい。『生命の核』というのは、生命の基となる情報の結晶……例えるならば、そう、『プログラム』。そのプログラムを、ハードである肉体に宿すことで、始めて『生物』として成り立つのだそうだ。  動植物の場合は、寿命を迎えた時点で既に、『魂』が、転生に利用可能な純度であるため、そのまま別の生命体に宿ることが可能なのだが、人間の場合は『記憶』という『不純物』の量が無駄に多すぎる為、転生には使えない。だからといって転生をさせなければ、『人の魂』ばかりが増えてしまい、何だか気持ちが悪い。  そこで設立されたのが、この『国』という『浄化施設』。つまり、この国は『人の魂』を浄化する為だけに造られたと言っても過言ではないのだ――  と、いうことらしいが……本当かよ。 「まあ……人の魂というのは、言わば『重大なバグを抱えたプログラム』のようなものなんですよね……」  こんな老人の口から、そんなデジタル単語が出るのは意外だったが、満足げな顔をしているので良しとする。少しイラッとしたが……  しかし、この老人の言っていることが正しいとすると、一つ、浮かび上がる疑問がある。  アリスのことだ。  
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