◇あの世の国のアリス。

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  「いろいろ調べてみて解ったんですけどね。あなたは、手違いでこの国に来てしまった可哀想な子みたいなの。だから、これから私はあなたを、『あなたの肉体』のある場所まで連れて行ってあげて、なおかつ、あなたをその肉体へと帰してあげようと思っているのよ」  また部族語だわ。何を言っているのかサッパリわからない。  雰囲気からすると、悪い人じゃないみたいだけれど…… 「さあ、着いたわよ」  その言葉と共に、私はペ女の肩から下ろされた。  久しぶりの地面の感触を確かめて振り向くと、なんとそこには、青い空だけが延々と広がっていた。  見ると、いま私の立っている場所から二三歩先へ行くと、もう地面がない。  私たちはいま、切り立った崖の縁にいるみたいだ。 「ようこそ。『国の端っこ』へ」  ペ女が私の顔を見て微笑む。  私は恐怖で動くことができなかった。  文字通り崖っぷちにいる恐怖もあるけれど、それ以上にペ女の微笑む顔が、まるで悪魔かなにかのように醜く、それでいて嫌らしい感じに歪んでいたからだ。 「あ、あなたが……魔王だったのね」 「は? 何を言っているの?」 「しらばっくれても無駄よ! お天道様が許しても、おじいさんと私はあなたを――」  キメのセリフをそこまで言いかけたところで、口に布的なモノを押し当てられた。  おじいさん臭いその布を嗅いだ途端、体の力が抜けて意識が遠退いていく。 「もう、うるさいわね。『コンパス』は大人しく道案内だけしてればいいのよ」  コンパス? ああ、おじいさんがよく丸を書くのに使っていた……  そこで私は、完全に意識をなくした。  
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