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「いろいろ調べてみて解ったんですけどね。あなたは、手違いでこの国に来てしまった可哀想な子みたいなの。だから、これから私はあなたを、『あなたの肉体』のある場所まで連れて行ってあげて、なおかつ、あなたをその肉体へと帰してあげようと思っているのよ」
また部族語だわ。何を言っているのかサッパリわからない。
雰囲気からすると、悪い人じゃないみたいだけれど……
「さあ、着いたわよ」
その言葉と共に、私はペ女の肩から下ろされた。
久しぶりの地面の感触を確かめて振り向くと、なんとそこには、青い空だけが延々と広がっていた。
見ると、いま私の立っている場所から二三歩先へ行くと、もう地面がない。
私たちはいま、切り立った崖の縁にいるみたいだ。
「ようこそ。『国の端っこ』へ」
ペ女が私の顔を見て微笑む。
私は恐怖で動くことができなかった。
文字通り崖っぷちにいる恐怖もあるけれど、それ以上にペ女の微笑む顔が、まるで悪魔かなにかのように醜く、それでいて嫌らしい感じに歪んでいたからだ。
「あ、あなたが……魔王だったのね」
「は? 何を言っているの?」
「しらばっくれても無駄よ! お天道様が許しても、おじいさんと私はあなたを――」
キメのセリフをそこまで言いかけたところで、口に布的なモノを押し当てられた。
おじいさん臭いその布を嗅いだ途端、体の力が抜けて意識が遠退いていく。
「もう、うるさいわね。『コンパス』は大人しく道案内だけしてればいいのよ」
コンパス? ああ、おじいさんがよく丸を書くのに使っていた……
そこで私は、完全に意識をなくした。
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