◆Alice in wonderland.

4/4

1215人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
  「待て!」  走りながら、前方に見える背中に叫ぶ。  あの女が振り向いた。アリスは女に抱き抱えられたまま、動かない。 「あらあらあら、なんのご用でございましょう?」 「とぼけるな。お前のやろうとしてることは分かってるんだよ。アリスを離せ」  女と少し距離をおいて立ち止まる。  女の後方には地面がない。  『国の端っこ』という名前そのままに、そこでスッパリと国土が途切れているようだ。 「んふふー、残念でしたあ。やろうとしていることが分かっていたなら、そこで立ち止まるべきではなかったですねえ」 「どういう……」  んふふふふという、堪にさわる笑い声と共に、女の身体が後方に傾く。 「まさか――」  飛び降りる気かっ、と言おうとしたところで、背中に衝撃が加えられた。  その勢いに吹っ飛びながらコケた俺は、思わず目の前にあった女の足を掴んだ。 「その足を離してはいけませんぞ! バラバラに落ちたら、辿り着く場所もバラバラ……二度と追えません!」  後ろから押してきたのは、あの老人だった。  そのまま俺は、落ちる女の足を掴みながらズルズルと引っ張られ、国の端っこから転落した。  
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1215人が本棚に入れています
本棚に追加