◆Epilogue.

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  「ああ……終わったわ……なにもかも……」  俺の目の前で、元口周トマトソース女が放心している。  地上に降りてきてしまった以上、俺も、この女も『国』に戻ることはできない。  もう、この女の口の周りがトマトソースで汚れることもあるまい。国では支給されていた嗜好品も、地上では手に入れることができないから。 「なんてことをしてくれたの……これで、私もあなたも、永遠に浮遊霊として地上をさ迷わなければならないのよ……」  もしお前がアリスの肉体を手に入れていたとしても、俺は浮遊霊になってたんだ――そう、反論しようと思ったが、止めた。相手にするのもバカらしい。  それよりも、まずはアリスが無事に肉体に帰れたことを喜ぼう。 「……偽善者」  女が呟く。 「偽善者偽善者偽善者偽善者! あーもう、やってらんねえ! 私は『次の身体』を探しに行くからな! 今度は邪魔すんじゃねえぞ!」  そう言って、アリスの病室を飛び出す女。  偽善者か――罵られても全く頭にこない。  恐らくあの女は、これから先もずっとあの調子で地上をさ迷い続けるに違いない。  それを思うと、哀れで仕方がなかった。 「……さあて。俺は俺で、これからどうするのかを考えなきゃなあ……」  アリスの寝顔を一目見て、病室を出る。  が、そこでまず廊下を右に行くか、左に行くかで迷ってしまう。  天国の端から転落した後、気づいたらこの病室にいたが、よくよく考えてみれば、ここは俺の全く知らない土地なのだ。 「まずは観光でもして歩くかなあ……」  一人呟いて右へと歩き出したとき、どこからともなく声が聞こえた。 「――観光など、している暇はありませんぞ」  
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