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あの老人の声だ――そう、思って振り向くと、果たしてその老人はいつの間にかそこにいた。
「あんた……なんでいるんだ? 地上に降りてきたら『国』には帰れないって、分かっているはずだろう?」
「ほっほっほ、物事には『例外』というものが存在するのですよ。ハクトさん」
なぜ俺の名を? それに……『例外』とはなんだ?
「もちろん。普通の魂であれば、地上へ降りたら最後。国に帰ることはできません。けれど一部の……魂を管理する役職の、更に上の役職――国そのものを管理する者には、例外的に、地上と国とを往き来する権限が与えられるのですよ」
「『国そのもの』? あんた、一体……」
「はい、申し遅れました。ワタクシ、国の管理を全面的に任されております、七代め大天使こと、セバスチャンと申します。以後、お見知りおきを」
なんだってえ! ――ジャムおじさんばりに叫んだ俺は、もうそこから先、開いた口が塞がらなくなってしまった。
「今回のあなたの行動! 見返りを求めない自己犠牲! 一人の少女を救うために走り回る姿はまさに愛! そのものです!」
いきなりテンションの上がる大天使サマ。ロリコンと言いたいのかこの野郎と突っ込みたかったが、いかんせん開いたまま口が塞がらないので言葉が出ない。
「そんなあなたを見込んでお願いがあります。どうでしょう、ワタクシの下で働いてはくれませんかな?」
そこでようやく、口を塞ぐことに成功した俺は、一言、
「暇つぶしになるのなら……」
とだけ、答えてやった。
こうして俺は、恐れ多くも大天使サマ直属の部下として、国で働く権限を手に入れたのである。
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