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「ああ! おじいさんが消えてしまったわ!」
今朝、目が覚めたらおじいさんが消えていた。家中探したけれど、どこにも転がっていない。
「おじいさんがいなくなったら、これから私はどうしたらいいの!?」
おじいさんは、何も知らずにこの国に来た私の面倒を見てくれた人。一切の記憶が無く、自分の名前すら覚えていなかった私に、一方的に『アリス』という名前を押し付けてくれたのも、おじいさん。
「おしーえてよーおじいーさんー! おしーえてよーおじいーさんー!」
とりあえず、おじいさんが常日頃、呼吸する間も惜しんで口ずさんでいた歌を熱唱してみる。
……なんだか虚しい。
「こうなったら旅に出るしかないわ! そう、魔王を倒す旅に!!」
おじいさんの言っていたことが本当なら、魔王を倒せば世界に平和が訪れるはず。そして、金銀財宝も手に入るはず。
そう思った私は、着の身着のままの姿で、おじいさんとの微妙な思い出が詰まった家を飛び出した。
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