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微かに漂う花の香り。
家を飛び出して市街地を駆け抜けると、そこは純白の花々が視界いっぱいに広がる花畑。
その上では、何とも穏やかな表情をした人々が、談笑をしたり陽気に歌を歌ったり、寝そべったりしながらグダついている。
「外の世界は危険がいっぱいだって、おじいさんが言っていたけれど、案外そうでもなさそうね。これなら、むしろ、おじいさんの方が危険な香りがしたわ」
そんなことを考えながら私は、とりあえず、その辺の人たちに魔王の情報を聞きまくることにした。情報収集は旅の基本だと、おじいさんが言っていたもの。
「すみませーん! 魔王を倒したいんですけど、どこにいるか知ってますか?」
手始めに、穏やかな顔の人Aに訊ねる。返答は……
「魔王? この平和な国に魔王なんていないよ」
魔王の存在を知らないなんて……きっと、洗脳されているのね。別の人に聞いてみましょう。
「すみませーん! 魔王を倒したいんですけど(以下略)」
次は、穏やかな顔の人Bに訊ねる。返答は……
「ハハハ。魔王なんていないよ。悪魔という役職ならあるけどね」
その2つの違いが解らないわ……きっと、この人も洗脳されているのね。別の人に聞いてみましょう。
「すみませーん! 魔王を(以下略)」
更に、穏やかな顔の人Cに訊ねる。返答は……
「ハッ! 平和過ぎて、頭がホンワカしちゃったか!」
この人も洗脳されているのね。でも、こんな穏やかな顔の人に、ホンワカとか言われたくなかったわ。
あまりに不快だったので、とりあえず、みぞおちに一撃を入れて悶絶させてあげた。
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