◇あの世の国のアリス。

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   微かに漂う花の香り。  家を飛び出して市街地を駆け抜けると、そこは純白の花々が視界いっぱいに広がる花畑。  その上では、何とも穏やかな表情をした人々が、談笑をしたり陽気に歌を歌ったり、寝そべったりしながらグダついている。 「外の世界は危険がいっぱいだって、おじいさんが言っていたけれど、案外そうでもなさそうね。これなら、むしろ、おじいさんの方が危険な香りがしたわ」  そんなことを考えながら私は、とりあえず、その辺の人たちに魔王の情報を聞きまくることにした。情報収集は旅の基本だと、おじいさんが言っていたもの。 「すみませーん! 魔王を倒したいんですけど、どこにいるか知ってますか?」  手始めに、穏やかな顔の人Aに訊ねる。返答は…… 「魔王? この平和な国に魔王なんていないよ」  魔王の存在を知らないなんて……きっと、洗脳されているのね。別の人に聞いてみましょう。 「すみませーん! 魔王を倒したいんですけど(以下略)」  次は、穏やかな顔の人Bに訊ねる。返答は…… 「ハハハ。魔王なんていないよ。悪魔という役職ならあるけどね」  その2つの違いが解らないわ……きっと、この人も洗脳されているのね。別の人に聞いてみましょう。 「すみませーん! 魔王を(以下略)」  更に、穏やかな顔の人Cに訊ねる。返答は…… 「ハッ! 平和過ぎて、頭がホンワカしちゃったか!」  この人も洗脳されているのね。でも、こんな穏やかな顔の人に、ホンワカとか言われたくなかったわ。  あまりに不快だったので、とりあえず、みぞおちに一撃を入れて悶絶させてあげた。  
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