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「はぁ……」
穏やかな顔の人Cを倒した後、やたらと小綺麗な河原で石を積み上げながら、溜め息をつく。
「結局、魔王の居場所は解らなかったし……どうしようかしら」
石の高さはいま、腰のあたり。この調子なら、身長の高さまで積むのも余裕だろう……と、調子に乗った瞬間。
「……あっ!」
石の塔がバランスを崩し、倒れた。
「あーあ、せっかく積んだのに……」
崩れた石を一つ、拾い上げる。その形は平らで、程よく手に馴染む大きさ。それと目の前にある穏やかな河が目に入る。
「……水切りをするにはもってこいね」
自己ベスト25回。更新なるか。私はその石を大きく振りかぶって、投げた。
小気味よいリズムで快調に跳ねていく小石。我ながら最高のピッチングだ。
小石は、8、9、10、と、跳ねる回数をどんどん増やしていき、間もなく、それが20の大台に乗ろうとしたところで、
「……あ、終わった」
川幅の限界。向こう岸に辿り着き、止まる石。残念ながら記録更新ならず。
……なんだか虚しい。
「はぁ……何だか馬鹿馬鹿しくなっちゃったな……」
よく考えたら、おじいさんは一度も本当のことを言ったことがないし……実際、魔王なんてどこにもいないに違いない。きっと、洗脳されていたのは、おじいさんの方だったのだ。そう考えると普通に納得出来る。おじいさんの目は、常に泳いでいた。
「……大人しく帰ろうかな……」
誰にともなくそう呟いて、立ち上がる。すると突然、背後から男の声で『オイコラ』と、声をかけられた。
あらやだ。スカウトかしら?
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