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そう思ったのも束の間。私が振り向くと、そこにいたのは、先ほど私が悶絶させた穏やかな顔の人C。穏やかな顔の人Cは、決して穏やかではない形相で私を睨んでいる。
一度倒した相手が起き上がり、こちらを見ているということは、これはスカウトなどではなく……
「私の仲間になりたいの?」
これもおじいさんの受け売りだったが、決して穏やかではない形相の穏やかな顔の人Cは、その私の言葉を聞くなり、『なんでやねん』と突っ込みを入れた。どうやらこの人に突っ込みの才能は無いようだ。
それにしても使えない。おじいさんの知恵袋。
「じゃあ、何の用だって言うの? 私はもう家に帰るつもりなんだけど」
私がそう言った瞬間、眉をひそめる、決して穏やかではない形相の……はぁ、長い……顔の人C。
「お前よぉ……人のこと殴っておいて、ただで済むと思うなよ?」
レディーに向かって、『お前』だなんて……長い顔の人Cのくせに、生意気ね。
「何だその目は? 詫びは無ぇのか、コラ。ここが天国だからって、調子こいてるとボコすぞコラ」
この人は何語を喋っているのかしら? とりあえず『コラ』を多様する部族みたいだけれど……
ちゃんと共通語で喋るようにお願いしてみようかな?
「意味分からないんですけど、コラ」
ちゃんと『コラ』を付けて、部族のマナーにも配慮してるし……完璧ね。
「ンだと!? コルァアッッ!!」
ハッ!? いけない。私ったら、『コラ』の発音を間違えたのかしら?
長い顔の人Cの顔が、更に厳しく、鬼のような表情になる。恐ろしい形相。
「醜い顔……やっぱり、魔王の手先だったのね」
「ンだと!? テンメェーッッ!!」
部族語を叫び、興奮気味に襲いかかってくる、鬼のような醜い顔の人C。
さすがに身の危険を感じた私は、鬼のような醜い顔の人Cにさりげなくリバーブローを入れると、経験値の高い銀のモンスターのような素早さで(おじいさん談)、その場から逃げ出した。
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