3809人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
「はぁ……」
晴天の下、僕は歩きながら嘆息した。
今日も学校でからかわれると思うと、快晴なのに凄く憂鬱。
思わず溜め息の一つもつきたくなる。
そもそも何故、からかわれるのかというと。
顔である。
いや、不細工だからじゃない。
僕は(さっきから僕と言ってるので、勿論男な訳だが)、自分で言うの嫌なんだけど……女みたいなんだ。
女顔だし、声もちょっと高いし……。
いや、中性的で済むならいいよ。
これこそ、自分で言うのは、ほんっっとに嫌なんだけど……。
周りからは美少女と囃される様な顔だったりします。
……嗚呼、朝っぱらからなんて恥ずかしい宣言してるんだろう。
「――あの」
僕が自己嫌悪に陥りうんうん唸っていると、ふと、声を掛けられた。
声の主である男性は、ガッチリはしていないが、背の高い普通の人。
だけどどこか、普通の人とは違う感じがした。
「はい?」
返事をして、立ち止まる。
見た感じ、道に迷っているのかな。
「この近くに警察署か交番はありますか?」
警察署か、交番?
なんでそんな所に用事が?
……でもま、込み入った用があるのだろう。
僕は、深く訊かない事にした。
「えっとですね、警察署はここからじゃ遠いですし、交番……は、この左の道をずーっと進んだとこ。大体1キロ先に有りますね」
「そうか、良かったよ。あまり人もいないようだし、丁度いいな」
男性はニタリと笑った。
「え?」
全く訳がわからない。
良かった?
人が居なくて丁度いい?
「じゃ、遠慮なく。あ、そうだ。でけぇ声は出すなよ?」
男性は忠告しつつ、尻ポケットから短い柄を取り出し、手首をスナップさせた。
……バタフライナイフ、と言う物だ。
20センチ程の折り畳んであった刃が、姿を表した。
その刃は朝日が反射し、妖しく輝いている。
そうか、殺す気なのか。
一一不意に、今朝のニュースが思い出された。
最初のコメントを投稿しよう!