みずきの場合

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「あんたも、もう25なんだから」 そう母に言われて、軽い気持ちでお見合いをした。 付き合っていたはずの彼とは3ヶ月前に音信不通になっていたから。 外資系商社勤務、写真で見たときも思ったけど… (結構イイ男かも…) 4歳上…29歳かぁ…でも、歳よりずっと若く見えた。 スポーツマンで会話も楽しいし、連れて行ってくれるお店もいい感じ。 背が高くて肩幅もあるのに甘い顔立ちで…そのギャップに少しドキッとする。 3回、4回と、お付き合いは順調に進んだ。 (そろそろ退職も考えなくっちゃ…) 勤め先の金融機関は、金融再編の折、吸収合併され続け、いつの間にか大手銀行になっていた。 (みずきは『わらしべ銀行』と呼んでいる) ポジション的には中堅の位置にいる。年末に近づくこの頃は特に忙しい。 「疲れたねぇ…」 ロッカールームでみずきがつぶやく。 時計は7時半を差していた。 隣で着替えながら、千夜子は「そうだね」と笑う。 みずきは、半年前に今の支店に転勤してきた。 だから、入社のときから一緒だった他の同期に比べれば、千夜子とはそんなに深い付き合いはない。 陶器のような白い肌、無口でクールな印象の千夜子が、みずきは正直苦手だった。 それでも、同じ職場で唯一の同期の存在は貴重だ。 「お先に」 千夜子は手を振ってロッカーを出る。 「お疲れ様~」 みずきも笑って手を振った。
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