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吹きつけた風を目を瞑ってやり過ごすと、千夜子は小さく息を吐く。
街はクリスマス一色。
通りはカップルや、プレゼントを抱えて大切な人の元へ急ぐ人々で溢れている。
(寒いなぁ……)
こんな日に一人なのは、全部自分のせいなのに……思い出せば、泣きそうになる。
数日前、偶然見かけた。
みずきと、楽しそうに笑う彼……息が止まった。
逃げ出すようにその場を離れ、駅のホームでしゃがみこんだ。
藤崎と別れたのは数ヶ月前、別れようと言ったのは自分の方だ。
元来頑固で譲る事をしない、似た者同士の千夜子と藤崎はぶつかる事も多かった。
折れるのは大概、藤崎の方で、感情表現の下手な自分を笑って許した。
素直になれない自分……
突然、不安になった。
(彼は、私の何処が好きなんだろう……)
『別れよう……』
そう言った千夜子を、藤崎は止めなかった。
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