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点滅する信号。
横断歩道を渡って来た人々が、立ち尽くすみずきを怪訝そうに見て行く。
腕を掴み、掴まれたまま見つめ合う藤崎と千夜子……
(何で……)
二人の間に漂うただならぬ空気は、遠目にもはっきりと感じられる。
信号が赤になり、走りはじめた車と、信号待ちの人混みに見えなくなる二人の姿…………
手の内で携帯が震える。
『着信 藤崎さん』
ディスプレイを見て、視線を上げる。
通り過ぎた車の隙間から、見覚えのあるコートが見えた。携帯を耳にあてたまま藤崎が振り返る。
奇跡的に合った視線の先、藤崎の唇がみずきの名を呼んだ。
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