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その後、何処をどう歩いたのか覚えていない。
気がつけば、ワンルームの玄関に座り込んでいた。
慣れないヒールのせいで踵は擦り切れ、左耳のイヤリングは無くなっていた。
「最悪……」
玄関に転がったヒールは、何度も躓いて溝に引っ掻けたせいで踵がボロボロになっていた。
「うっ……」
滲んだ視界、放り出した鞄の中で点滅し続ける携帯電話の電源を切り、傷だらけになったヒールを手に取る。
「ゴメンね……」
現実は、映画のようにはいかない。
溢れた涙と共に、堪えきれない嗚咽が暗い部屋に響いた。
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