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「もっと飲む、みずきちゃん?」
「いえ、私あんまり飲めなくて…」
みずきは顔の前で手を振る。
テーブルの向こうで、藤崎は微笑んだ。
5回目のデート。
藤崎と待ち合わせたのは、オフィス街裏手の路地にあるこじんまりしたフランス料理店。
柔らかな間接照明に毛足の長い絨毯、店内には軽やかなヴァイオリンの音色…
「今日も遅かったんだね、仕事忙しい?」
「すみません、お待たせしちゃって…」
今年も後10日あまり。
残業で、みずきは30分遅刻してしまった。
「気にしないで」
藤崎は笑う。
緑のテーブルクロスにキャンドルの灯りが揺れる。
「来週…」
「えっ?」
「クリスマスだね…予定ある?」
「いえ…」
「じゃあ…予約してもいいかな?すごく雰囲気のいいイタリア料理の店を見つけたんだ」
ワインで熱くなった頬を気にしながら、みずきはコクリと頷いた。
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