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藤崎はメールの送信ボタンを押し、勢いよく携帯を閉じた。コートのポケットに押し込み、腕時計を見る。
既に、約束の時間は過ぎている。
イブの夜、街は人で溢れていた。
街路樹を飾るの青い光と、通りに流れるクリスマスソング……少し前なら鬱陶しいとしか思えなかっただろう。
2年間付き合った彼女と別れたのは、数ヶ月前。
些細な喧嘩から、突然別れを切り出したのは彼女の方だった。
喧嘩だけが理由じゃないとわかってはいたが、張り合った意地をお互い引く事が出来なかった。
突然に降ってわいた見合い話。気乗りなどするはずもなかったが、みずきに会って気持ちが変わった。
明るく表情豊か、嘘のつけない素直さは、藤崎の心にすんなりと入ってきた。
お酒に弱いところも、年より幼く見える顔立ちも、時折見える危なっかしさも……いつの間にか藤崎を捕らえた。
可愛いと思うし、笑ってくれたら嬉しい。
通りを早足で歩きながら、内ポケットに入れた物をコートの上から確かめる。
(喜ぶかな……)
藤崎は驚くみずきを想像して、口元を緩めた。
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