46683人が本棚に入れています
本棚に追加
「ついたね♪はい、荷物♪」
美樹猫に素早く切り替え、俺に荷物を渡してくる。
「サ、サンキュ」
「自転車置いてくるから、待っててね♪」
「はいはい…」
「滝口さぁん!おはよー!」
「おはよ♪」
あの事件以来、何人かは俺達が付き合っているということに気付いた人が増えた。まだ大半が知らないままだけど。
こういうときに、幼なじみは楽だなと思う。
「お待たせ!じゃあいこっか♪」
作り笑顔だが、顔が良いのでとても可愛く見える。
「どーしたの?」
「なんでもない。行こう」
そういって教室に行き、荷物を置いて着替えをするためにトイレへ向かった。
「おっす、悠紀!」
「拓也か…」
拓也は市総体以来、妙に明るくなった。
さて、どうやって断ればいいのか。罪悪感のせいでうまく話ができない。
「悠紀、あのさ!夏休みのことなんだけど…」
…来た。すまん、拓也!俺にはどうすることもできないんだ…。
「俺今年は無理になった!わりぃな!」
そう言ってにかっと笑う拓也。肌が黒いので、歯が一際光って見える。
「…へ?」
「今年は忙しいんだ!あんないいとこ、行けないのは残念だけどな…」
なんだかよく分からないが、とにかく断る手間が省けた!
「そ、そうか。そりゃ残念だな」
そう言って逃げるようにトイレを飛び出し、席に着くとチャイムが鳴った。
最初のコメントを投稿しよう!