始まってしまった夜

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伯爵は嘘をついてなかった。夢だと思いたかった事は揺るぎない事実だった。空想は現実の世界と隣り合っていたのだ。 「・・・・何で、その伯爵が俺を助けた?本来なら食料じゃないのか?」 俺は今までの疑問を素直に聞いてみた。 「貴様を助けたのは単なるきまぐれに過ぎん。きまぐれで助け、下僕にする事を思いついたのだ。これからが楽しみでしょうがないぞ。」 伯爵は本気で言ってるらしい。これからどうなるんだろ俺。 「記憶巡りの旅に戻るぞ。これからが面白いのでな。」 伯爵は背筋が凍り付くような笑みを浮かべ、指を鳴らすと場面が変わった。 そこは病院の手術室と理科の実験室が混ざったような場所だった。その中心の台座に俺の死体があった。 「何をするつもりだ?」 嫌な予感がし、尋ねてみると、 「処置だ。あのままでは使い物にならないのでな。さぁ、始まるぞ。」 嫌な金属音と共に伯爵の言う処置は始まった。 その処置とは回転カッターで身体を切り刻み、パーツ分けし、内臓を交換し、パーツをくっつけ直し、壊された部分を修復し、傷跡を整形し、俺の身体だけ元通りにする事だった。 正直、その光景は俺の胃に何かあったら戻していたに違いない。
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