始まってしまった夜

8/14
前へ
/247ページ
次へ
気がつくと俺はベッドに横たわっていた。あれは夢だったか。畜生、嫌な夢だったぜ。本当に気が狂いそうだった。何だってあんなリアルだったんだ? 起き上がり、支度をしようかと思った刹那、異変に気がついた。 ここは俺の部屋じゃない? 周囲を見回すと、そこは映画で見るような屋敷の一室みたいな場所だった。 夢、な訳がない!ここは現実だ。それは分かる。だったら何故俺は此処にいる? いや、よく考えろ。さっきもリアルだったが、夢だったじゃないか。じゃあこれも夢かもしれないじゃないか。そうだ夢だ。 だが、そんな希望的観測も部屋の扉が開くと同時に簡単に破綻した。 「おはよう。我が愛すべき新たなる下僕よ!」 その人物は俺に彫刻のような笑みを浮かべ、爽やかに朝の挨拶を告げた。 その人物は明らかに日本人では無かった。今まで見てきた男の顔の中で比類無く美しく、長い金髪は金細工の様に煌めき、その碧眼は見た者を魅了するであろう輝きに満ちていた。 しかし、それと同時に人間らしくもなかった。その出で立ちは明らかに現代の格好では無かったからだ。例えるなら映画に出てくるドラキュラみたいだった。いや、むしろそのままか?
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

967人が本棚に入れています
本棚に追加