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「まもなく宮戸、宮戸駅です。北海線乗換えのお客様は……」
電車のアナウンスであたしははっと顔を上げた。
そして赤ら顔をごまかす為に、ペットボトルを頬に当てた。
「せ…がわ?瀬川、起きて、もぅ宮戸駅着くよー?」
あたしは何事もなかったかの様に振る舞った。
「ん…ぁ?あーー寝た寝た。もう駅か…」
浩太はふあぁ、と大きなあくびをした。
「はぃ、竹刀」
「お、サンキュ。ずっと持っててくれたんか、わりーな」
浩太はあたしの肩にもたれた事に全く気づいていなぃ様だ。ほっとしたような、寂しいような……
「そいやお前、なんで桜岡駅まで行くの?」
「んー?由梨と待ち合わせしてんの。買い物とかブラブラする、かな」
浩太は少し考えた様な顔をして
「そか、俺も桜岡まで行こうかなー、なんてな。じゃ、またな」
と言い残し、電車を降りた。
あたしは窓越しに手を降って見送った後で、ふーーっと大きなため息をついた。
気になる人と一緒に帰るなんて、マンガみたぃな事が自分の身にふりかかるとは…思ってもみなかった。
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