シェイク

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そして土曜日、あたしは桜岡のファーストフード店で由梨を待った。 「ごめん、遅れちゃった」 由梨は大きな花柄のワンピースを着てきた。 「ううん、あたしも今来たとこ」 あたしはジーンズに黒のタンクトップ。とても明るい色を着る気にはなれない。 「シェイク、どれにする?」 「えーと…じゃあ苺ミルク」 「あたしカルピス味にしよっと。ポテトも頼むから一緒に食べよ?」 「うん」 そして窓際の席に着き、体育祭やテストなんかのたわいもない話をした。 二人とも笑ってはいるけど、どことなくぎこちない。 そしていつの間にか曇り空から雨がぱらぱらと降ってきて、窓ガラスを静かに濡らした。 僅かな沈黙……。 そして沈黙を破って由梨が話を切り出してきた。 「あの…さ、やっぱり瀬川のこと好きだった?」 は?何言ってんの? 浩太のこと、相談したじゃん。忘れたの? あたしは持ってたシェイクを由梨の頭にぶちまけてやろうかと思った。 由梨は続けた。 「あ、瀬川、あんたの気持ちに気づいてたってさ」 …?何を言ってんの? そんなの、あんたの口から聞きたくない。 友達と思ってたけど、もぅ終わりだね。 「ね……怒ってる?」 …は?あんた馬鹿? 恋愛相談してた友達に好きな男取られて怒らない女がいたら見てみたいよ。 「…ううん、怒ってないよ」 あたしはキレてもしょうがないから、冷静ににっこり笑って答えた。 目は笑っていなかったけど。 こうしてあたしは一人の"友達"に、心の中で"絶交"を告げた。
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