図書室

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   目が覚めた。布団が渦のように丸まっている。蹴飛ばしたり手で掻いたりはしていないだろうが、寝返りを幾度も打ったのは確からしい。    今日も夢をたくさん見た。疎遠になりはじめた友人と気まずく電話をしたりした。    目が覚めた所以は寒さであろう。北の地の朝は寒い。夜半に剥いだ布団を無気力に集めて身体を縮こませる。寒い寒い。時計は7時と30分とを指す。今ここで寝てはどうせ次は正午を回った頃であろうことが容易に想像できる。それが切ない。    さて何を思ってか、私の脳は私を中学の頃の図書室へと迷い込ませていた。普段鍵のかかった利用に不自由な部屋の戸の南京錠が解いてあった。不思議に思い開けてみると、中には古いソファに腰かけてギターを掻き鳴らす少年がいた。足のすらっとした、可愛くて活発な少女へと転化されている私が近づいて話し掛ける。この話は夢だろうか「妄想」だろうか、また目を瞑った頃には忘れているに違いない。    そうそう、中学の図書室などを久しぶりに思い出した。中学校校舎は日本でも唯一と言われた“S字型校舎”で、真直ぐは走れない廊下。図書室は2階、西の棟にある。古い本ばかりで私は苦手であったが図書カードに日付の印を捺すのが楽しくて、委員になったのも悪くなかったかなあ、なんて。そうそう、前期後期1年2年と代議委員をつとめ、3年前期もしたのだが、代議委員は何故か人気で、いつも自分がやるのは申し訳なくて最後だけ図書委員やったんだっけ。    ああ、読書感想文を書いたなあ。図書室の奥の古びた本のなか、ひとつだけ蛍光オレンジの本があって(『ミカ!』だったかな)おもしろくて、久しぶりに食い入るように読んだなあ。    ──あれ、何の話だっけ。  
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