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「あのさ」
めいが切り出した。私の低いテンションをあげようとしたのか、もっとさげようとしたのかいまいちわからないけど。
「やすとは、どうするの……?」
めいはずっと気にしていた。これからももし交際を続けるなら、遠距離になる。ただやすは自分から「大学に入るときにさようならをしよう」と言っていた。私は悲しかった。どこかで、嘘で良いから「一生離れたくない」って言ってほしかったのかもしれない。こんな偽善ぶったことば、誰よりも嫌いだったはずなのに。
「別れるよ、あと少しで」
「そんな……付き合ったままでいればいいじゃん」
「……無理する必要ないと思う。無理して足かせ付けたって鬱陶しいだけ。本当に必要なら、もし別れた後でも求め合えるはず。違う?」
めいには痛烈だったかもしれない。めいとたくみはついこないだのクリスマスに付き合いだした。まだ熱いし、めいも初めての恋人だし、これからもずっと一緒にいたいなんて言っていたから。
「ちょっと言いすぎじゃないのか」
よしきが久しぶりに口を開いた。
「せっかくの打ち上げなんだからさ、暗い話はまた今度」
よしきは暗い話を嫌った。私が笑い話のつもりで話しても、翳りのある話になるとなかなか笑ってくれなかった。
私はまた、窓を見ながら一筋ずつ丁寧に涙を落とした。
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