*第三章* 過去ノ噺

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  ――――『あのとき』   つい、一週間前。     まだ、暑さが残る頃。   俺は駅前で待ち合わせをしていた。     誰を待っていたかと言えば紬である。   今日は幼なじみ二人で…まぁある意味『デート』である。     紬の事は、嫌いでは無い。   いや、寧ろ好きだ。   だが、その好きがどんな好きか分かっていない。    それが現状だ。   兄妹みたいなものかもしれないし、それ以外かもしれない。   そんなしょうもない事を考えていると声を掛けられた。     「ごめん!待った?」   紬がサンダルをぱたぱた鳴らし、走りながらやってきた。     随分と走りにくそうなサンダルだ。 急いで走ってきたのか、はぁはぁと肩で息をしていた。     少しからかってやろうと思い、眉間に皺をよせ、敢えて不機嫌そうな顔を作って、言った。   「30分待った。」   「ぇえっ!ご…ごめんねっ!!」     …こんな素直な反応が見れるから面白い。   からかいたくなる。  
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