*第三章* 過去ノ噺

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  「待ってっ!!」     自分で重心を傾けた力とは反対に力が働き、此処に引き留められる。 振り向いたら俯いた中條がいた。       「行かないでよ…碌…せっかく久し振りにこんなに話せたのに……」   「は……?」   「私の所に居てよ…」   「何言って……?」     「ホントに、解ってないの?」     中條が顔をあげる。悲しそうな、顔。       なんでそんな顔してんだよ。       「だから…何言ってる―――         ―――――キキキィィィーーーどんっ           俺の声を掻き消した甲高い音。   鈍い音。   両方聞こえてきた。   人々のざわめき、叫び声、悲鳴。 何故だか悪寒が走った。         「………紬?」     名前を呟いた後、理由も分からず無意識のうちに走り出した。  
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