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一瞬、少しだけ紬の瞼が動いた。
碌はそれに気づき、手をどけ、紬の顔を覗き込む。
「紬?」
「………ん……っ………?」
呼びかけに応えるように、小さな声を出した後、ゆっくりと目が開いた。
一週間見ていなかった紬の瞳。
澄んだ濃い茶色の瞳。
たった一週間なのに随分久し振りな気がした。
紬の口が開く。
数度口を動かした後、
「…ぉ…ろ………く………?」
掠れた、小さな言葉を発した。
少しの間聞かなかっただけなのに、懐かしい声だと思った。
「私…どうして…?」
紬はその言葉と共に、上半身を起こした。
碌はその体を抱き締めた。
「碌…?…碌?どうしたの?」
自分の状況がよくわからない紬。
碌の力が更に強くなった。
「…よ……かった……。」
切れ切れになる言葉。
落とす様に小さく。
それと共に頬をつたう、涙。
「碌……?」
不思議そうに碌を見る紬。
その後何かに気付いた様に紬も碌を優しく抱き締める。
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