*第一章* 日常の風景

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  *** はぁ… 本日何回目かの溜め息をつく。   なんでか今日に限って溜め息ばかりでる。 それに、特に理由は無いはずなのだが、なんとなく沈んだ気分になる。   ……いや、理由がないと、思っていたい。       「何やってるんだぁ?碌(ろく)?」     言葉と共に、人一人分の体重が肩に掛かる。   「いや、別に。何もやってないけど…」     投げやりぎみに即答した答えに体重の主は気分を害したのか、眉間に少し皺を寄せた。   「何だよぅ。せっかく人が話題を提供しようとしたのによぅ」   肩の重みが離れ、前に不機嫌な表情をした顔が現れた。     「あー悪い悪い。まぁ…考え事、しててよ。」   考え事…していた訳では無いのだが、そのような言い訳を使う。   ある意味での現実逃避…なのか…   言葉を聞いたあとすぐ、不機嫌顔を作っていた体重の主―――拓瀬(たくせ)の顔が驚いた表情を作り、   「えー碌が考え事なんてそれこそ考えられねぇぞ!?」 「失礼だ。」     よっぽど俺は考え事をしないように見られているらしい。   「ったく……」       どうしろって言うんだ。自分のせいで人が傷ついたというのに。  
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