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藤原のビンゴの興奮は覚めやらない。
主催者側から、何人もが祝辞に駆け寄って来る。
カメラマンまでついている
最新技術は此処で威力を発揮した。
マルチスクリーンに、巻き戻された映像がリプレイされる。
今の藤原の歓喜ぶりや山積みのチップがローアングルからアップでと
船の後尾から、花火が打ち上げられた様子だ!
究めつけは、スフィンクスが立ち上がり、雄叫びを上げ、ピラミッドに立体映像のクレオパトラが浮かび上がり全裸で手招きをする。
天井からレーザーが、5番をビームし、藤原にカクテルライトのハリケーンが襲う!
涼子が、それらの演出に見惚れている横で、
達也は、この間も冷静だった。
それより、疑問が解決しない焦燥すら感じていた。
(ディーラーは、狙い通りに球を投げる事が出来る。にもかかわらず、藤原が毎回大量にベットする、背番号の数字の5番に球はダウンした。これは、ディーラーが意図的に藤原を勝たせ事になる。
こいつらグルか?…と言う疑問が湧くが、
ディーラーの元に駆け寄る主催者側の人間の仕草は、ディーラーをも祝福している様子で、疑問視等は、程遠い
どういう事なんだ?)
達也らの普通の客のベットは、数万がせいぜいだ。
クジラの一撃でカジノの収支が赤字になる…と言う話を聞いた事がある。
まさに、そんな場面が目の前で起きた訳だ。
なのに、主催者やディーラー迄、藤原以上に喜んでいる様子に見える。
哲郎も藤原の祝辞に来た。
そして、達也を見かけて声をかける。
『達也は強運だね!ライヴで見たのかな?ビンゴの瞬間を』
やはり、哲郎も嬉しそうだ。
『カジノには、相応の出費だね?』
達也が探りを入れる。
『出費?あぁ、そういえば出費だね!
でもまぁそれより、客の歓喜を煽るシステムの一部が公開出来た事がよかったよ』
(負けを意に介していない)…事は、此処でも確認出来た。
(負ける事が嬉しい!)
(常識はずれが常識の訳は?)
達也は自問自答する。
祝辞の人に囲まれた、藤原の上ずる声が耳に届く
『爽快やわ!普段、ルーレットなんてしないんやけど、これでルーレットの虜やわ
今夜は最高の夜になりそうやな』
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