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どうしてあの時、藤崎君はあたしに声をかけてくれたんだろう?
どうしていつも、気にかけてくれるんだろう?
あたしは特に目立つ要素があるわけでもなく、藤崎君と席が近いわけでもなかった。
どちらかと言えばあたしは窓側の一番前の席で、藤崎君は廊下側の後ろの席。
近くというよりもむしろ離れていた。
ましてや小学校や中学校が一緒だったわけでもなく、本当にあの日、入学式の日が初対面だった―――
「佐藤さんって何中学出身?」
入学式が終わり、自分の席でHRを待っている時だった。
一人の男子が人懐っこい笑みを浮かべて話しかけてきたのだ。
あたしは突然の出来事に、一瞬思考回路が止まりその男子を見入ってしまった。
「えっ?えっと」
人見知りの激しいあたしは、面識のない人に話かけるなんて有り得ない行動だった。
だから窓から見える桜を一人で眺めていた。
無理して話しかけるより一人でいるほうが楽だったから。
気付けば、教室の中は何グループかの集まりが出来ていて、もしかしたら一人でいたあたしはクラスの中で浮いていたのかもしれない。
だから藤崎君は話しかけてくれたのかもしれない。
「あたし県外に住んでいて、家庭の事情で高校入学と同時に引っ越してきたの。だから……」
あたしの声は鼓動が激しくなると共に、次第に消え入りそうな程に小さくなっていく。
せっかく話しかけてくれたのだから、頑張って話を続けなきゃ!
そういう想いはあっても、頭の中は真っ白で話の続きが思いつかない。
焦れば焦る程ドツボに嵌まり、沈黙のまま時間だけが流れていった。
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